本人は、自分が転校するのは青天の霹靂だと思っていました。もちろん、転校することを予想している生徒などいないでしょう。高校に入ってからはクラスになかなかなじめず、部活をする事だけが学校に行くモチベーションでした。部活のみんなは本人を大事に思ってくれていて、ここが居場所でした。親にも申し訳ないという後悔の念がにじみでていて、ここから心機一転頑張っていきたいと意気込んでいました。
面接の時も暗かった表情をしていた彼。「ここは進学に強い通信制だから。」先生からのその言葉に、すこし安心したようでした。

彼は転校する前、勉強という勉強ができていませんでした。1日の中でメリハリをつけて行動することができず、時間を持て余していました。しかし、いつまでもそうしているわけにもいかず、ようやく入学を決めたのがMUGEN高等学院でした。
学校での彼からはそのような姿は想像も出来ないくらい実直で、黙々と学習に取り組む姿勢は皆の模範でした。休み時間も周りに構うことなく、自分のペースで学んでいたことが、彼の素晴らしい集中力を育んでいました。
MUGEN高等学院で培われた力は自律性でした。少なくとも転校前と後では生活や心の持ちようは大きく変化しました。最大の変化は「勉強に対する姿勢」で、前の学校に行っていたときは部活もあり、スキマ時間だってそう多くは取れず、自ら勉強するどころか、机に向かうこともあまりありませんでした。普段の生活でも、高校受験の時でさえも「自ら」勉強していたという記憶はないと言っていましたが、MUGEN高等学院では主体的な学びを実践していたため、学習計画も自ら立てるものでした。
彼には、「受動的」が「能動的」になったことで、分かった気になることがなく、理解は何倍にも深まっている実感がありました。インプットが主である受験勉強もアウトプットにまで昇華させることを自ら実践できたのです。
学校にはいつも一番に登校していました。彼の顔を見て一日が始まります。学習の始まりは当日の内容を先生に見せてから。定期的に進捗を知らせてくれるときに先生と交わす会話は関わりを生み、その会話が増えることで、先生と生徒お互いの承認が増えました。静かな佇まいでしたが、彼は誰に対しても笑顔でした。家よりも学校の方が集中できるから。常に彼が学校にいることが当たり前のようでした。